春のかくれが

世界は物語でみたされる

4月26日

寮を出て、さっきまで雨が降っていたことを知る。アスファルトの湿り気と空にオレンジ味をおびる雲。鼻から息を吸って、泣き出しそうになる。雨上がりの夜に混ざる甘い匂い。わたしがよく知っているはずの匂い。
コンビニで、サンドイッチとおにぎりとコロッケと1日分のビタミンを買う。あの人はあまりレジがうまくないからとなりのレジに並ぼうと思うくらいにはよく行っているコンビニ。夜の花壇に咲く赤白黄色のチューリップがひらいていて、あらわ、と思う。今日やらなければならないことが、1日分のビタミンを摂ることになっていく。

 

助手席で泣くのはもう何度。気づかずにのうのうとしていたわたしがばかみたい。ばかみたい。後から種明かしみたいに言われても、それが手品だったことすら知らない。今から手品をするよって言って。でなければ種明かしなんていらない。種明かしは人を安心させるためにあるのでしょう。私はわたしのためにしか泣けないということを、もう何度。

 

夜行バスで東京へ。一年後、わたしの隣にあなたはいないのかもしれないことを思う。